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授業を終えて昼休みの鐘が鳴り、俺はゆっくりと席を立ち屋上へと向かう。
道行く生徒に話し掛けられ、適当に返事をしたり手を振り返したりしながら、ダラダラと廊下を歩き、屋上へ続く扉を開いた。
「…将臣…」
「おう」
楓は既に屋上で俺を待ち受けていて、その手には大きな薔薇の花束が抱えられていた。
さあっと暖かい風が吹き、春の光に透ける薄茶の髪が舞い踊る。
「小さい頃から…ずっと貴方の事をお慕いしていました。将臣…好きです。私を貴方の恋人にしてください」
日に焼けにくい白磁の肌を上気させて、潤む琥珀の瞳が真っすぐに自分を見つめる。
「将臣。好きです」
緊張に震えるピンク色の唇が自分の名を呼ぶと、一歩前に足を進め手に持った薔薇の花束を俺に差し出した。
俺の返事は、最初から決まっている。
「楓」
「はい…っ」
「断る」
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