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「見かねた政臣が、作ってくれたんですよ。ブッシュドノエル
…まあ、卵も割ったことのない幼児が見よう見まねで作ったものですから、
真っ黒なのに生焼けのホットケーキに生クリームを塗って二つ折りにして、その上から直火で溶かした板チョコをかけたとんでもないものでしたが…」
「…うるせえよ」
思い出した。あの間違っても食べ物とは言えないグロい物体。
結局、うちのシェフが作り直した物を一緒に食べたんだった。
「政臣は負けず嫌いですから、その後沢山練習して、とても美味しいブッシュドノエルを作ってくれましたよね」
「クリスマスのケーキだと知らなかったから真夏のブッシュドノエルだったがな」
「ええ。ですからそれ以来、変わりにロールケーキを作ってくれて…
私は、政臣が一生懸命グロテスクなケーキを作ってくれた時から、世界でいちばん政臣とロールケーキが好きです」
楓が好きだから作ってやったと思ってたが、逆だったのか。
「俺が作ったから…」
「ええ。政臣が私を慰めるために作ってくれたから、大好きなんです
政臣が思ってる以上に、私は雅臣がくれたもので出来てるんですよ」
抱き締めた熊ごと俺の肩に凭れてきた楓の肩に腕を回し、頭を撫でてやる。
昔から好き好き言ってたくせに、聞いてねーよそんな話は。
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