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空を飛ぶ夢を見た、と颯太が言っていた。でっかい犬に追われて逃げていると、いつの間にかビルの屋上にいた。このままじゃ噛み殺されるから、無我夢中で柵をよじ登り、そのまま落ちる。するとどうだ、気がつくと街を滑空していた。そのうちだんだん体が軽くなって、もう滑空どころじゃない。自分の意思で浮いたり沈んだり、まるでピーター・パンのように飛んでいく、という具合の夢だと楽しそうに話す。
「空か、良いな。鳥のように羽ばたいてじゃなく、ピーター・パンみたいにってとこが特に気持ちよさそう。」
「でしょ?あれ本当に気持ちよかったよ。」
そう言って、颯太は窓の外を見た。つられて見てみると気持ちがいいくらい快晴で、沢山の蝉が鳴いていた。街路樹も、アスファルトの道路も、中古車店の昔っぽい装飾も、ホームレスのダンボールハウスも綺麗に見える。夏の魔力は凄い。陽光に照らされてぼうっとしている俺たちも、ガンガン電力を使って部屋を冷やしているクーラーも、壁に貼られているkissやMetallicaやFACTのポスターも、最新のキーボードも、もしかしたら綺麗に見えるのかもしれない。それを言おうとしたら、颯太が立ち上がった。「あ、そろそろ行かなくちゃ。」
そう言って颯太は、立ち上がった。
「一緒に行く?」
「おう。」
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