柚と浮浪者

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 液体は幼い頃によく遊んだスライムのような性質で血よりもドロッと濃い。 男は形を保とうとして保てない出来損ないのヒトになっていた。 いや、完全にヒトでないものになっていく。  液体と化しても男の意思は続いているのか、柚を侵食しようと近づいていった。 「いや・・・」  柚はもう逃れられないことを知っている。 だが、液体が肌に触れるとほんのり冷たくて、心地よいものと勘違いさせる。 やがて、液体は柚の全てを飲み込んだ。
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