19人が本棚に入れています
本棚に追加
「全兵員は現地点をもって作業を放棄、可能な限り速やかに戦闘態勢に移行せよ。繰り返す。全兵員は戦闘態勢に移行せよ」
整備テントでは面々がわき目もふらず、セットアップに専念していた。
その横をすり抜け、平田隼人はコックピットにすべりこんだ。
後部座席では神代桜が火器管制システムをチェックしている。
隼人は金剛丸と連結すると、操縦系システムを稼働させた。
眼下では東花梨が拡声器を手に一番機をトレーラーまで誘導している。
続いて二番機。
「三番機、お願いします!」
東が隼人をうながした。
隼人は慎重に部材を避けながら、トレーラーにとりついた。
市街に出ると、まだ残っている札幌市民が小隊に手を振っている。
器用に敬礼をしてみせる金剛丸に、市民達は歓声を送った。
街並みは途切れ、あたりの風景はしだいに緑が濃くなった。
小隊は時速四十キロメートルの速度で国道を進んでいた。
戦時下の道路は荒れていた。
凹凸の激しい道を、慎重に進まねばならない。
最初のコメントを投稿しよう!