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はじめての敗北。
しかも惨敗だった。
隼人は敵の追撃を避けようと、必死に逃げまわったことしか覚えていない。
駆け込むようにトレーラーに飛び乗って撤退する途中、桜が話しかけてきた。
「私は自分の非力さに腹を立てているわ」
桜は相当に動揺していた。
「まさか、これほどなんて……」
桜のつぶやきを隼人は聞き逃さなかった。
「どういうことです?」
帰途、指揮車のハンドルを握りながら、栗田は行徳に尋ねた。
拙劣極まりない攻撃。
しかも行徳は一言も口をはさまなかった。
今回の戦いは、未熟な猟犬を野獣の大群の中にけしかけたようなものだ。
栗田は眉をひそめて行徳の答えを待った。
「彼らはより狡猾な、抜け目ないパイロットに成長するはずです。この敗戦はそのための投資と考えてください」
「手荒な方法だ。戦死者が出ても不思議はなかった」
栗田は吐き捨てた。
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