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「改めて説明する気なんて一切ないわ」
思いだそうとしている俺に対して鍵子は、嫌味なことを言う。
「……なんとなく覚えてるよ。確か、使わないでクリアすれば、余計な過去をなかったことに出来るんだろ」
言われっぱなしってのも癪なもので、とりあえず覚えていることだけを偉そうに言ってみた。
「今回渡す鍵は、4つ」
鍵子は、俺の発言など聞いていないかのように次の言葉を述べる。
「難易度は、そうね、中の下って感じかしら。ちなみに、これは、追加の説明だから教えてあげるけど、4つのうち1つは、既に忘れていた過去の鍵よ」
「……引っかかる言い方だな。忘れていた過去って一体どういうことだ」
「そのままの意味だけど。人間ってのは、不思議なもんで、物事を忘れるように出来ているのよ。まあ、サービスだと思っていいわ」
「俺の頭がおかしいのか、リスクが増えたように感じるな。それがサービスになるかどうかってのは、少々疑問だぞ。既に忘れているんだろ? わざわざ掘り返す意味が判らないな」
容姿は、まだ大人とは言い難く、それなのに態度だけは、子供のソレとは勝手が違う。
そのせいか揚げ足を取るような発言をして、大人気ないことをした自分に、些か罪悪感が芽生えていた。
そして、俺の質問に対する鍵子の答えは、少々長い沈黙から始まった。
「……なんだよ」
「いえ、別に」
ただ、と鍵子は、言葉を繋げる。
「あなたが見かけ以上に頭が悪いから驚いただけ」
「……は?」
些か芽生えていた筈だった罪悪感は、強力な暴言という名の除草剤投入により姿を消した。
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