一章

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 騒音の主は、夜のように黒い髪に桜色と、いうよりもどこか、血の色に似た、すおう色をした鮮やかな瞳をしており、背中には赤子を背負っている、まだ若い男だった。  その対面、怒鳴られた先にいたのはまだ齢十になるか、ならないかの男女の子供だった。 「なんじゃ、諏桜(すおう)騒々しい。そんなに叫んでは、背中の赤子が死んでしまうぞ」 子供にしては、ずいぶんと老獪(ろうかい)なしゃべり方で、男の子供が言った。  その言葉に諏桜と呼ばれた男はチラッと、赤子を心配そうに見たが、ここまでかなりの速さで来たにもかかわらず、赤子は呑気に寝ていた。 その姿に諏桜は安心して、もう一度二人の子供に向き直った。 「天理、てめぇ神なら神らしく、社にいやがれ。光流、お前もだ」 諏桜は天理とよんだ男の子供と、未だに畑仕事をしていた、女の子供、光流にそう言った
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