一章

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「嫌じゃ。だいたい参拝客もまともに来ないのに、社にましましているのは儂らの性に合わん」 そう言って横をプイと向いた。 そう、この二人は双子の神だ。 今でこそ十程の姿形だがその齢はすでに4百を超えている。 ただ、20年程前隣の村に大きな寺が出来て以来、氏子が減り今ではもう、諏桜の一族のみになっていた。  そんなわけで天理と光流は暇になって、高天原に居た時に親神がしていた畑仕事に精を出していた。 「でも、氏子が来たとき位ちゃんとした格好しろよ」 その言葉に天理はさらに横を向いてツーンといった感じに、 「はっ、儂にはそんな珍妙な能力が無いんでのう、熊がこようが氏子が来ようが分かりはせんわ。だいたい普通の人間には儂らが見えんだろうが。見えるのはせいぜい、お主ら桜森(おうしん)家くらいなもんじゃ」
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