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枯れてひび割れた田の中に男が一人。中空を見つめて立ち尽くしていた。
動きやすくデザインされた革の衣装を纏い、右手には鋭く尖った剣。手ぶらな左腕に巻かれている布は呪文のように難解な文字列で埋め尽くされている。
男は絶えず中空を見つめる。その表情は固く、決意を結んだものであった。
しばらくして、男は覚悟を決めたように口を開いた。鈍重で威光を持った声が発される。
「産巣日神(むすひのかみ)よ、姿を現されよ」
その呼びかけに答え、男が見つめる中空に一点の陰りが出来た。陰りは徐々に人型に広がりながら、色を濃くしていく。
やがて、さながら影から飛び出すように、それまで何も存在しなかった虚空に、派手な白茶の衣をはためかせながらそれは具現化した。
温かな微笑を浮かべ、包み込むように男を見つめるその姿は、誰がどう見ても『天女』と呼ぶに相応しい淑女であった。
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