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後光に照らされながら、産巣日神は男と視線をぶつけ合う。
完全に影から抜け出た産巣日神は、静かに麗しい唇を揺らした。
「生成、発展、完成を司る神である私に何の用ですか?」
言葉にさえ、重みがある。
そんな、この世の万物を司りし神を目の前にしてもなお、男の佇まいは堂々と威厳のあるものだった。
「我が貴様に求めるは唯一つ」
言って、男は右手の剣を握り直す。す――と鋭く尖る切っ先を産巣日神に差し向ける。
「貴様の其の力、貰い受けに参った!」
それを産巣日神は変わらず温かな眼差しで見つめ、男の表情と瞳の奥の決意が揺るがぬことを確かめると、ふっと微笑を漏らした。
「貴方も私の神の力が欲しいのですか。悪いことは言いません。今すぐ諦めて立ち去りなさい」
諭すように紡がれたその言葉を男はどのようにして受け取ったのだろう。男は剣を一度己の身の後ろに向けながら走り出した。
もちろん向かう先は産巣日神。
その様子を見て産巣日神は、
「――警告はしましたよ?」
悲しそうに眉をひそめた。
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