0人が本棚に入れています
本棚に追加
……男は、力に飲まれた。
身体は乗っ取られ、そして……塵一つ残さずに消えた。
男が消滅した後、殺されたはずの産巣日神が起き上がる。
胸に刺さる剣を抜いて、
「だから、やめたほうがいいと言ったのに……」
呟く。
もう傷は塞がっていた。
「……ヒトでは、この力を受け入れられないから……」
もう存在しない、憐れな男に向けて、産巣日神は言う。
「……止められなくて、すいません……」
本当に申し訳なさそうに、彼女は言った。
悲しみに顔を歪めて涙を流す。
その様は神というよりも、一人の人間に見えて……
そんな自分の姿なんて気にもせず、彼女はただただ泣き続けた。
END.
最初のコメントを投稿しよう!