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時代遅れ感はあるが、彼には非常に似合っており、傍目からは芸能人の様に見えた。啣え煙草だと更に格好がつくらしいが、此の御時世には無理な話だと嘆く礼二だった。
「とりあえず、チューナーとギターバックとシールド買うかな。んで、金に余裕あったらエフェクターも何個か・・・、マルチエフェクター買うのも有りっちゃ有りだが個人的には微妙だな」
デパート街の間にある道の途中ー、日陰に覆われた此の場所は春の中頃にはまだ少し肌寒く感じる。
「エフェクターとかマルチエフェクターとか良くわかんねぇけど、渋くてイカしたロックな感じなら俺的にはオールオッケーだ礼二!ヒャッホーイ!!」
馬鹿なテンションで騒ぐ彼にはこの肌寒さは全く伝わっていないのだろう。ある意味幸せな男である。
ビルの間を抜け、等間隔に広葉樹が並んだ大通りを道沿いに進む。休日の今日は平日に比べて車の量が少ない様だ。
横断歩道の前で信号待ちー。
風は穏やかに吹き、広葉樹の葉をざわざわと揺らす。喧騒に溢れるデパート街にあるオフィス街で、普段は感じる事の出来ない穏やかな雰囲気だ。
「とりあえず、あそこ入るぞ。あそこの10階に楽器屋がある」
信号が青に変わり、2人は歩き出す。横断歩道の先は人だかりー、休日のデパートらしい活気に溢れていた。
デパートの中はお洒落な服を身に纏う人々で溢れていた。元来は洋服のショップがメインのデパートである事が原因だろう。エスカレーターは超満員ー。エレベーターは・・・言うまでもない。仕方無く、超満員のエスカレーターを使って10階を目指す。
「・・・まあ、混んでるのは5階までだろ。そっから上は服屋少ないし」
ぶつぶつと呟く礼二に対し、文夫はとても静かだった。妄想に妄想が重なり、気分は最高潮ー、どうやら半分トリップしている様だ。本当に幸せな男である。
「・・・着いたぜ。お前、ある意味天才だな」
げんなりとした表情の礼二に対し、文夫は首を傾げた。まあ、半分トリップした状態で、ちゃんと10階まで来れた訳だからある意味天才かもしれない。
まあ、天才かどうかはさておき、彼の隣を歩いていた礼二には同情する。
「まあ、未来の天才ギターリスト様だからな!最強の師匠礼二、そして、最愛のギタージョージを手に入れた俺は完璧だぜ!」
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