good3そして、俺は恋をした

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 シールドコーナーに着いた2人ー。有線派な礼二からすれば、ワイヤレスという考えは一切無い。 「パフォーマンスにはうってつけだが、安いのは低音削れてスカスカになっちまうからな・・・」  という持論である。 「んで、どのシールドがオススメなんだ?」  壁に掛けられた大量のシールドを見ながら訊ねる文夫ー。あんまり従順過ぎるのもどうかとは思うが、何も解らない内からあーだこーだ言うのはもっとも良くない。そう考える礼二にとって、文夫の反応はかなりの好印象だった。 「俺のお薦めはHistoryのケーブルだな。ギターの音をどストレートに伝えてくれるし、ノイズがほとんどねぇ。5000円の奴はプロでも使えると俺は思ってる」  名前としては、まだまだ老舗に追い付かない部分がある事は否定できない。しかし、Historyの製品は日本製らしい精巧さがあり、特にシールドは信憑性が高い。そういった面を考慮すると、やはり彼の言う通りHistoryのシールドを買った方が良いだろう。 「んじゃ、それにすっかな!とりあえず、チューナーとエフェクターとシールド2本で2万5000円っと。ケース代を考えるとガード払いになりそうだなぁ・・・」  飲みに行かなくなって余裕があるとはいえ、20歳正社員の安月収に2万5000円は正直辛い所である。更にギターケースで一万位ー、カードで分割して買うのが理想的だ。 「まっ、今年は良く働くし、ボーナスに期待すっか!」と前向きな笑顔を見せる文夫を眺めていた礼二は、ふぅ・・・と溜め息を吐いて微笑むと、頭を掻きながらー。 「・・・まっ、そのギターケースはくれてやるよ。基本ベースだからあんまり使わねぇし。そしたら、1ヶ月1万ちょいで買えるだろ?」  一瞬、文夫はポカーンとした表情を浮かべたが意味を理解した瞬間、涙で瞳を潤ませた。 「マジか、マジか!礼二!ありがとう!本当にありがとう!!」  その様子が何とも可愛らしく(あっち的な意味は無い)、礼二は照れた様子で「気にすんなって」と返すのだった。 「・・・♂だ」  風船ガムを膨らませて、パン!それを繰り返しながら、金髪の少女が文夫達の事を見つめていた。黒のパンクなシャツ、フリフリのスカート、シマシマの靴下に低い身長を隠すために履かれた超厚底な赤のロングブーツが印象的だ。
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