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 深いため息をつき、手の中にある携帯電話を眺めた。  着信履歴を呼び起こし、一週間前の日付で残っているコウジの名前を確認する。  胸の奥のどこからか湧いてくる、苦しいほどの衝動に逆らえなくなりそうで、思わず声を出した。 「コウジは今仕事中!」  予想以上に大きく響いた自分の声で、ようやく冷静さを取り戻し、手早く顔を洗った。  洗い終わった顔をタオルで拭きながら、ふと、鏡に映った自分に言い聞かせる。 「一週間くらい連絡が途絶えてたって、平気だよ」  そう。コウジの声なんか、聞かなくても平気だ。
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