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電車を降りる時に、老婦人とまた目が合ったので、軽く会釈をした。
彼女が微笑みかけてくれたことで、家に着くまでの足どりは少しだけ軽くなった。
すぐに築数十年の古いアパートに辿り着いた。私の部屋は、学生の頃から1人で暮らすワンルームで、2階の角部屋に位置する。
扉を開けると、今すぐにでも引っ越していけそうなくらい、殺風景な空間が広がっていた。
退職が決まってからの1ヶ月間のうち、ほとんどが有給休暇の消化期間になっていたから、就職活動と部屋の掃除ばかりしていたのだ。
今まで必死に働いてきた分、少しくらいゆっくり遊んで暮らしたいという気持ちもあったけれど、もしもの時のことを考えて、出費は最小限に抑えたかった。
――そして今まさに、もしもの時が訪れていたのだった。
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