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 そうこうしているうちに十分温まったこたつに足を入れる。洗面所へ行く前にスイッチをオンにしておいたのだ。  明日から4月だというのに、まだまだ寒い。  去年の私なら、もうとっくに仕舞っているはずのこたつは、引きこもり同然の生活をする私には頼もしい味方だった。  こたつ机に右頬をぺったりとくっつけて、机の上に置いた小さな花束をぼんやりと見つめる。  今回の退職の件を、家族と親しい友人にはすぐに報告した。  両親は、「いつでもこっちに帰って来い」と言ってくれた。  母は私の大好物のオムライスを作ってくれ、父は記念日にしか飲まない日本酒を出してきた。  2歳下の弟は「暇ならこれ貸してやるよ」と、大量の漫画本を渡してきた。  友人たちは皆一様に労いの言葉をかけてくれ、飲み会も開いてくれた。
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