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空が赤く燃えていた……。
否。燃えているのは空ではない。
その下の大地、正確には小さな村が炎の中に消えようとしていた……。
野盗の襲撃と見えた。
逃げ惑う村人の手足は痩せ細り、明らかに栄養が足りていない。
だが、村人を追い、錆びた剣を振り回す連中にしたところでその体格は大差ない。
頬はこけ、土気色の肌は不健康極まりない。
肉付きのいい者など皆無だ。
目は血走り、狂気に侵されているように見えたが、彼らは正気だった。正常だった。
そして、この虐殺こそが彼らにとっての正義だった……。
◆ ◆ ◆
「くそう、ひでえ……」
「気持ちは同じよ。でも、今は何もできないわ」
その声は村の外れの森の中からのものだ。
歯を食い縛り、血が出るほどに拳を握りしめる男と、優しく肩を抱く女……。
「どうして分からない? こんなことをしても、何も変わらないのに……」
「……行きましょう。この光景は私にも辛いわ。
忘れちゃいけないことだけど、思い出したくはないわ」
男の肩を抱く女の腕も微かに震え、視界がやや歪む。
「ああ……、すまない……」
ふたりが立ち去った後も、殺戮は終わらない……。
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