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「大丈夫?」
は?
俺の身体をポンッと軽く叩く細い手。
誰だ
伝わらない言葉を俺は睨みに変えて返してやる。
てっきり怯えて逃げるのかと思えばそいつは何故か「よかった」と微笑んだ。
変なやつ
細い手に長い髪。
黒く光った艶のある髪はいくら真っ黒な俺でも敵わないくらい綺麗。
だけど細い手と同様、身体も骨のような女だった。
「日向ぼっこ?ここあったかいもんね」
何のんきなこと言ってやがるんだ。
しかも、のうのうと俺の隣に座って来やがって…
「ふふ…本当だ。あったかい」
当たり前だ。
日当たりのよい此処は俺のお気に入りの場所。
追い出さないだけ感謝しろ。
「夏恵ちゃん。」
あれは…いつも婆さんや爺さん相手に世話をしている看護婦
こっちを見て手招きしている…
正確にはこの女に、だろうが。
名前を呼ばれた女はばつ悪そうに頭をかき「えーもう?」なんて駄々を捏ねながら立ち上がった。
女が立ち上がると急に風当たりがよくなり何だか少し寂しかった。
「まだ四月なんだから…冷えるわよ」
「そんなことないもん。あの場所だってあったかかったし…」
数分の口論を繰り返した二人は結局、あの女の方が折れたのか看護婦に連れられ中に入っていった。
俺に手を振り。
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