47719人が本棚に入れています
本棚に追加
/984ページ
可愛は居たたまれなくなって立ち上がり、
「ごめんなさい、私、もう帰ります、おやすみなさい」
そう言ってリビングを出ようとすると、
「―――可愛」
と強い口調で呼びとめられ、戸惑いつつ脚を止めてゆっくり振り返った。
「俺を惚れさせてみせてよ」
そう告げて真っ直ぐに見詰めた樹利の強い眼差しに、心臓がバクンと跳ねた。
可愛は強い鼓動と目眩に何も言えないまま会釈だけして、逃げるように部屋を出た。
それは今まで抱いたことのない感情に、胸を焦がした切なくも甘苦しい夜だった。
第一章キセキの出逢い
END
最初のコメントを投稿しよう!