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『ええええ?
樹利さんに、好きだって言われたってぇ?』
可愛から電話で一部始終を聞いた菜穂は露骨に声を張り上げた。
『それで?それでその後、どうしたの?』
電話の向こうで急かすように尋ねる菜穂に「う、うん」と可愛は落ち着かない様子で電話を片手に部屋の中をウロウロと歩きながら、
「それがね……その後、樹利さん、急に打合せが入って、そこで別れて帰ってきたの」
そう言って窓の前で足を止め、なんとなく外を眺めた。
『ちょっとぉ、おめでとう!
じゃあ可愛は樹利さんの彼女なんだね』
“彼女”
その言葉に、戸惑いの表情を浮かべた。
「……そうなのかな?」
『そうだよ~、だって好きだって言われて、キスされたんでしょう?』
「でもね、付き合ってくれとは一言も言われてないし、何より私なんかが樹利さんの彼女になっていいのかな」
電話を持つ手に力をこめながら不安げに告げると、菜穂はアハハと笑った。
『ばかだね~、なに言ってるの。
とりあえず、もう遅いから切るね。明日学校で色々聞かせてね』
嬉しそうに告げる菜穂に、可愛は「うん、それじゃあ明日」と電話を切り、はぁ、と熱い息をついて、また窓の外を眺めた。
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