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「童(わっぱ)、名と生まれを言え」
「……桃太郎。桃から生まれた、○○村の桃太郎」
その言葉に、赤鬼さんは驚きを隠せません。なぜなら、○○村はあの、宝をくれた(というより押しつけられた)村だからです。
おそらく、刺客か何かとして送り込まれて来たのでしょうが――
「なんとまぁ不遇な童よ。親に騙されてここまで来たのか」
「そう思うんなら早くほどけよ。やられ役のくせして生意気だぞ」
「は?」
「僕は桃太郎だぞ? 村の有志だぞ? こんなことしていいの、ねぇ?」
「…………」
「それともほら、きびだんご欲しいの? 鬼も動物と大差ないんだね」
ピキッ。
まずい雰囲気を悟った周りの鬼たちが、桃太郎の口を止めにかかります。
「おい童、その辺に――」
「やっぱり所詮鬼なんてそうなんだよ。僕みたいな英雄にやられるための存在なんだね」
ブチッ。
しかし、もう手遅れでした。
「童、死ぬか?」
「ふん、やれるもんならやってみ――」
ボガァァァァアアンッ!!
赤鬼さんの放った金棒で、隣の島の岩山が崩れ落ちました。これには一同蒼然とするしかありません。
「死ぬか?」
「勘弁してください僕が悪かったです大人しく帰りますんで許してください!」
◇…………◇
その後、ついでに宝を持たせて桃太郎を解放した赤鬼さんたちは、作物も実るようになった島で平和に暮らしたとさ。
これを桃太郎が嘘八百用いて内容を変え、英雄扱いされていたのがバレるのはまた別のお話。
End
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