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その日、ボクは電車に乗り遅れた。
この春高校生になり、通学で電車を使い始めたのだが、一般的に田舎と形容されるボクの地元では、一本逃すと軽く一時間は待たねばならなかった。
それを理解しながら、遅れてしまった。我ながら、久々にとんだ失敗をしたなと思った。
仕方なくホームのベンチに座り、はぁと嘆息する。周りには田んぼや畑、木々ばかりで誰もいなかったため、遠慮はしなかった。普段のボクは、人前でため息をつくほどブシツケではないのだ。
「どうしたの? ため息なんかついて」
「…………っ?!」
本当に突然だった。彼女との出逢いは。
その時のボクは、気配もなく急に、いつの間にか隣に座っていた彼女に驚き、飛び上がってズッコケていたのだが。
そんな様子のボクを見て、彼女はクスクスと微笑する。
「ふふっ。ごめんね、驚かせちゃったかな?」
「え、あ、いや……」
正直、文句の1つでも言ってやろうかと思った。だけど、言えない。言えるはずがない。
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