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そんな些細なことなどどうでもよくなるほど、彼女以外の景色が霞んでしまうほどに、彼女は美しかったのだ。
大きく綺麗な琥珀色をした瞳。細く、触れれば簡単に折れてしまいそうな四肢。その身を包む、純白のワンピース。そして、何よりも印象的なのは。
茜色に染まる空に照らされ、赤く煌めく肩あたりまでのびたミドルショートの髪だ。赤く見えるというより、本当に赤なのかもしれない。だけれど、そんな目立つ髪色でも、彼女にはよく似合っていた。まるでそうでなければならないかのように。
「わたしは緋色(ひいろ)。あなたは?」
「ぼ、ボクは、誠也(せいや)」
「そう。よろしくねセイヤ」
こうしてボクたちは出逢った。初めて本数が少ない田舎鉄道に感謝したかもしれない。電車が来るまでの時間は、気づけばあっという間に過ぎた。
そして、電車がやって来た。
「それじゃあ、今日はお別れだね」
「あれ、キミは乗らないの?」
てっきり同じ電車を待っているのかと思ってたよ、と呟くと、彼女は静かに首を横に振った。
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