1.戦場の少年

3/4
前へ
/269ページ
次へ
「た、助けてくれ!」 ひとりの大人が少年に向かって命乞いをした。 その大人は3歩後退したが、4歩目が出ることはなかった。 4歩目の足が後ろに下がる前に、その大人の胸には剣が刺さり、その剣が抜けると、重力に負けたように崩れ落ちた。 「――……ごめん」 少年が悲しげな表情で呟いた言葉は、誰に届くわけでもなく、周りの音に紛れて消えた。 「...ヴッ......ッ...」 近くにいた敵が全て倒れた時、突如、少年は頭を抱えてその場に膝をついた。 少し離れた場所でその様子を見ていた敵は、今だとばかりに少年に近寄り、少年に向かって剣を振り下ろした。 しかし、その剣が少年の首を切り落とすことはなかった。 振り下ろされた剣は、少年の剣によって弾き飛ばされ、その剣の持ち主は少年の次の一振りで地面に崩れ落ちた。 立ち上がった少年の表情は、先ほどまで浮かんでいた"苦悩"ではなく、明らかに"快楽"が浮かんでいた。 ニヤニヤと戦場を見渡す。 少年は自分の頬についた血を指で拭うと、それを口もとへ運び、味わうようにペロリと舐めた。 少年の笑みが増していく。
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!

260人が本棚に入れています
本棚に追加