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「た、助けてくれ!」
ひとりの大人が少年に向かって命乞いをした。
その大人は3歩後退したが、4歩目が出ることはなかった。
4歩目の足が後ろに下がる前に、その大人の胸には剣が刺さり、その剣が抜けると、重力に負けたように崩れ落ちた。
「――……ごめん」
少年が悲しげな表情で呟いた言葉は、誰に届くわけでもなく、周りの音に紛れて消えた。
「...ヴッ......ッ...」
近くにいた敵が全て倒れた時、突如、少年は頭を抱えてその場に膝をついた。
少し離れた場所でその様子を見ていた敵は、今だとばかりに少年に近寄り、少年に向かって剣を振り下ろした。
しかし、その剣が少年の首を切り落とすことはなかった。
振り下ろされた剣は、少年の剣によって弾き飛ばされ、その剣の持ち主は少年の次の一振りで地面に崩れ落ちた。
立ち上がった少年の表情は、先ほどまで浮かんでいた"苦悩"ではなく、明らかに"快楽"が浮かんでいた。
ニヤニヤと戦場を見渡す。
少年は自分の頬についた血を指で拭うと、それを口もとへ運び、味わうようにペロリと舐めた。
少年の笑みが増していく。
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