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「こんなどこの子どもなのかも分からない娘を育てるだと!!ふざけるな!!」
「しかし!放っておけば死んでしまいます!」
「そんなこと知らぬわ!!」
奏柳凜華1歳。
私は奏柳の人間では無い。
奏柳凜華と言う名前さえ本物ではない。
そんな私を育ててくれた義母。
そんな私を嫌う義父。
そんな私が嫌いだった私。
何故、私は捨てられた?必要ないから?育てる自信が無いから?
自分の事が分からない。
知りたいけど知りたくない。
愛が欲しいけど愛なんて欲しくない。
私を見てほしいけど私を見ないで。
どっちが本物の自分の気持ちか分からない。そもそもどちらも私じゃないのかもしれない。
育てて貰う事になった私の生活は地獄の様な日々だった。
義母と私は隔離され私は真っ暗な地下室で育てられた。心は淀み、肉体は成長を止め私は黒く闇に染まっていった。
そんな生活が数年続いた……奏柳凜華6歳。
ある日私の人生は大きく動いた。
冷えた食事を渡されるときにしか開く事の無い重い鋼鉄の扉は嫌な音を立てて開いた。
……まだ食事の時間では無い。
「凜華!!!」
「!?…あ……あぁ」
突然抱き締められた私は言葉を発する事も出来ず、小刻みに震えながらも、懐かしく安心する匂いに包まれ涙を流した。
「凜華!!!凜華!!!」
「…あ、ぁぁ」
教育を受けていなかった私は何も言えずただ呻くだけだった。
それでも心の中には温かい気持ちが溢れていた。
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