奏柳凜華の採用

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「それにしてもここ広すぎですよね?」 「んーそうなの?私ここ以外のお風呂って言ったら施設の狭いのしか知らないから分かんない」 「施設?」 「ん。あれ?みやみやか凜華様に聞いてない?私達の生い立ち」 「はい。何も」 「そっか・・・それじゃあここのお掃除終わったら話してあげる」 「はい・・・」 楼無も決して馬鹿ではない。 『施設』と言う単語が出れば大体の予想は付く。 いけないことを聞いてしまったのではないか? 内心そう思っていた。 30分後。 「ふぃーおつかれぇー」 「はぁ、はぁ・・・つ、疲れました」 「お茶持ってくるから少し休んでて良いよ」 「はぁ・・・はぁ、ありがとう、ございます」 脱衣場の戸棚からポットとお茶っ葉を出し、お湯を沸かし始めた。 「ははは、そんな物まで用意してるんですね」 苦笑いを浮かべながら言う。 「キチンと仕事をしてればみやみやも凜華様もほとんどのことは見逃してくれるからね」 「はぁ・・・前のお屋敷とは全然違いますね」 「もしかしてこうしてお茶してたら怒られちゃう?」 「即刻クビですよ!」 「わぁーそれじゃあ私はムリかなー」 「でも、仕事量で言えばこっちの方が圧倒的に多いです」 同時にそれらを毎日こなす寧々さん達は愛さんや舞さんと同じくらいスゴいです。 「ここはお屋敷の大きさと比べて人が少ないからね」 「どうしてこんなに少ないんですか?」 「んー私達の問題かな」 「寧々さん達の?」 「っそ。あ、お湯が沸いたみたい」 嬉しそうに言い慣れた手付きでお茶を煎れ楼無の前に出した。 「ありがとうございます」 「さてさて、それじゃあ少し昔話をしようかね」 「はい」 寧々の声のトーンが少し真剣になったのに気付き気を引き締めた。
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