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「恐怖のあまり気絶しましたね」
「私そんなに怖かったかしら?」
「はい。昔話の鬼を思い出しました」
「悪気は無いのよね?」
「はい」
「・・・・・・」
「美夜様、今の内しっかりと働くように暗示でも催眠でもかけませんか?」
「そこまでやる必要は無いわ。この子はこの子なりに自分の仕事をしてるのよ」
「??どういうことでしょうか?」
八枝が聞き返すと厨房の戸棚に鎖を仕舞い答えた。
「寧々が私の所から逃げた後、仕事を手伝うために瑠璃が来たのよ」
「瑠璃様が?」
「うん。寧々が仕事を手伝ってくれたから早く終わったって嬉しそうだったわ」
「そんなことをしてたんですか」
「その他にも楼無の様子を見に浴場に行ったら寧々が面倒見てたわ。この子にもこの子なりの考えがあって行動してるのよ」
「寧々様・・・」
普段はあれだけど心の中では他のメイド達を心配してる。
「流石ね」
「はい、流石・・・年長者です」
バッ━━━━
「年長者はみやみやだから!私は準年長者だから!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「あ・・・おはよう」
顔をあげたことに後悔しながらその場しのぎの挨拶をした。
「寧々様のそれがなければ・・・」
「そうね。玉に傷よね」
「あ、もしかして私の信頼ガタ落ちした瞬間?」
「はい」
「うぅぅ、これが若さ故の過ちってやつなんだ」
「勘違いも甚だしいですね。ただの愚か者ですよ」
「お、老化?」
「ッチ。これだから老人の相手は・・・寧々様耳が少し悪そうですよ。大丈夫ですか?」
優しさ溢れる笑顔で寧々に聞く。
「前半部分!後半優しいけど前半の方舌打ちまでしたよね!」
「ふふふ、寧々様ってば耳がお腐りになってませんか?」
「丁寧な言葉だけど所々悪意を感じる!!」
パンパン━━━━
「はい!休憩は終わり。昼食の準備を始めましょう」
楽しそうに眺めていた美夜はポケットに時計を仕舞い手を叩いた。
「おっと、もうそんな時間ですか」
「はーい。がんばろー」
それまでじゃれ合っていた二人は自分の持ち場に戻った。
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