暇【たいくつ】

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「……私としたことが、忘れていました。コレに触れて『入れ』と念じれば入れます」 「わかった」  僕は触手を伸ばし、新しい体に入り込む。  凄く馴染む。流石ニャルのお手製だね。分身を創らせたら右に出る者は居ない。 「ニャル、ありがとうね」 「勿体なきお言葉。さて、アザトース様。ヨグ=ソトースが迎えに来ました。どうか、あちらの世界を楽しんで下さい」 「うん。ニャルも地球で楽しんでね」 「勿論です」  うん。ニャルの人間モードのスマイルだけで人間が支配できるね。爽やかすぎる。 「ニャル、その笑顔はモテるよ」 「……そうですか?」 「うん、間違いない。まぁ、試して見なよ。じゃあ、僕は行って来ます」 「行ってらっしゃいませ」  僕はニャルに手を振り、目の前のヨグ=ソトースに飛び込む。彼は次元の狭間その物。一瞬で目的の世界に着いた。  便利だけど、人間が入ると蒸発したりするから危険なんだ。  まぁ、僕は何ともないけど。 「ありがとう、ヨグ=ソトース」 『コォォォ……』 「じゃあねー」  彼は喋らないけど良い奴だ。人間と結婚したこともあるらしい。僕は結婚したことは無いけど、人間の女は可愛らしくて好きだ。  せっかく人間の身体を手に入れたし、ハーレム建造も良いかもね。  まぁ、そんな妄想よりも。 「先ずは大気圏突入しないとね」  今はお目当ての星の衛星軌道上にいるんだよね。  どこに降り立とうか。 「まぁ、詳しい落下場所は落ちてからのお楽しみにして。落ちるのはあの大陸にしよう。おっきいしね」  僕は背中から翼を生やし、大陸に向けて落下を開始した。  その日、魔の森に流れ星が落ちた事が大陸に知れ渡るのは翌日の事。  僕と人間の初めての接触は、落下から7日後の事だった。
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