プロローグ

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僕は体を丸くしてうずくまったまま、母さんが去っていく足音を聞いていた。 そして出て行ったのがはっきりわかると、ホッとして小さなため息をつく。 今日の演技はうまくいった。 とりあえず、しばらくぶたれることはないだろう。 お皿を洗いおえた僕は、母さんにたのまれていた別の家事をかたずけた。 そうしたら母さんは、僕に朝食を食べていいといってくれた。 弟が残したコーンフレークだ。 お皿に半分くらい残ったミルクに、コーンフレークのかけらが浮いているだけ。 僕は大急ぎで飲み込んだ。 だって、母さんの気が変わるかわからない。 前に、ちょっとずつゆっくり味わっていたら、取り上げられてしまったことがあった。 もう二度とあんな間違えしたくない。 数分後僕は母さんが運転するステーションワゴンにのりこんだ。 今朝はいっぱい働いたから学校まで乗せてってくれる。 いつもは学校まで走らされるから、学校につくのは授業が始まる時間ギリギリだ。
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