プロローグ

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まずい。 母さんの機嫌が悪くなってきた。 『まったくもう、朝からおこらせないで!』 母さんのイライラした声が聞こえてきて、それからドシンドシンど足音をたてて、廊下を歩いてくる音が聞こえる。 母さんがキッチンに入ってくるまでに、早く終わらせなくちゃ。 僕はお湯に手を戻した。 でも……遅かった。 『ブーッ時間切れーっ!』 母さんが僕の耳元でささやく。 そのとたん、僕は体じゅうに鳥肌がたち、ぶるっとさむけがしてくる。 でもそんなことを感じる暇はなかった。 『このノロマ!あたしが言った時間内にできなかったな?』 とキッチンに怒鳴り声がひびきわたり、母さんの手がとんでくる。 僕はほっぺたを思いっきり叩かれて、壁を打ち付けられた。 どうして?僕、頑張ったよ。 時間内にやったよ。 心の中で思ったけれど、もちろん、そんなことは口にだせない。
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