プロローグ

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この家の中では、何をするにも命がけなんだ。 「ママおねがい!」 ぼくは心の中でつぶやいた。 「何か食べさせて!もう一度ぶたれたっていいけど、とにかく何か食べたいんだよ」 口に出して言ったつもりは、なかったけど、母さんには僕の心のさけびが聞こえたみたいだ。 僕はもう一度、母さんにぶたれて、そのいきおいでタイル張りの流しに頭をたたきつけられた。 僕はもう立ち上がれない。 まいりました。 もうこうさんです。 そう母さんにわかってもらうためにじっとして涙を流していると、母さんはフンっ!と鼻で笑って、またドシンドシンと足音を立ててキッチンを出て行った。
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