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「…ところでお母さんは誰かに作ったことある?」
…ないとは思うが一応礼儀として聞いて見た。今度はちゃんと陸斗用に卵白とグラニュー糖を混ぜメレンゲを作る。
「んー貰ったことはあるけど、作った経験はあまりないわね?」
「…期待を裏切らないね、ってか貰ったって同じ女から?」
「…えぇ」
「百合かよ、そんな粗雑な性格してるから…」
メレンゲがつんとした角を作る。お母さんが後ろ来て指でメレンゲを舐める。『甘い』と言ってもう一度ボールに手を伸ばすが俺がそれを防ぐ。これでは次に行くまでにメレンゲがなくなってしまう。
「悪かったわね粗雑で…しかしチョコあげる相手誰?朱には言わないから教えてよ」
「な、なんでシュウが出てくんだよ!」
さすがに俺の“アレ”を知らないと思っていた母親に指摘されると思わず声が裏返ってしまう。
「それはもう朱が過保護であげた相手に殴り掛かろうに行くのが心配なんでしょ?」
ドヤ顔で俺の首に腕を回すお母さん…一応ほっとして腕を退かす。俺が女がダメなのは陸斗と和哉を除いては同じ種の人とかしか話してない。知られたらそのままでは言われない。きっと俺を軽蔑して避けるだろう…今が幸せでいるならこのままで良い…。お母さんは仕事が忙しくあまり構ってくれないけどそれでもシュウがいるから良いと思ってる。
「………蒼…?」
名前を呼ばれ自分が強く拳を握り締めているのに気付く。心配そうに俺の顔を覗き込むお母さん…俺はふぅと溜め息をついて卵黄と生クリームを混ぜ合わせる。
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