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私は素早く氷の鎌を持つレイに駆け寄り、背中合わせに立つ。
「随分時間が掛かったね」
「リョウこそ、倒してしまうんじゃなかったの?」
言うね、と返して、私は周りを観察する。
凍てつく雪原。極寒の冷気に閉ざされた温もりを感じさせぬ世界。しかも、自然に空間に漂う魔力すらも凍らせていた。
しかし、これでは……
「レイ、これじゃあ、私の黒夜も形を保てないんだけど?」
「あっ」
そう、レイの……この場合はフィーネか。その能力は恐らく本人以外の魔力の凍結。よって、私もその例外ではない。
私の予想通り、まだ形を成している黒夜の刃部分を触ると、まるで薄氷のようにポッキリ折れてしまった。
「それ、魔力で出来てたの?」
「刃の部分はね」
ただの鉄扇になり果てた燕月を、ボックスも開けないのでスカートのポケットに仕舞う。
「ご、ごめん」
「ま、過ぎた事を悔やんでも仕方ない仕方ない。それに、魔法以外にも戦う術はあるし」
そう言いながら、私はパンッ!と手を合わせて地面に手をついた。
バチバチッ、と弾ける音と青い稲妻を光らせて、地面から一本の槍が生えてくる。
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