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「そう、腐らないでよ。私としては、貴方と仲良くしたいのだから」
「仲良く?笑わせるな。お前は俺を隔離し、切り捨て、あの王子の隣に居る事を選んだのだからな」
淡々と、しかし、燃え盛らんばかりの憎悪と憤怒、殺意を籠めて、彼は私を睨む。
「ねぇ、リョウ。知り合いなの?彼は一体……?」
後ろから、レイが聞いてくる。
「彼は……」
彼を紹介しようとして、私はハッとする。彼には、名前すら無いのだ。
「フン、相手に名前を聞く時は、先ず自分から、と習わなかったか?小娘……いや、小僧かな?」
「なっ!?」
レイが驚きの声を上げる。それもそうだ。初対面でいきなり性別が反転している事を言い当てられたのだから。
「ま、俺の知った事ではないな。ならば、お望み通り名乗ってやろう。俺の名は………
【篝野 涼】だ」
そう、この事件の黒幕。それは、【男の私】だったのだ。
「リョウと同じ……名前?どういう事!?」
「そのままの意味さ。それ以上でも以下でもない」
まるで、細く鋭い三日月のような笑みを口元に貼り付け、【俺】は言った。
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