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───ガラクタ、大型ゴミ。その他にあるのは、使われなくなって埃が被った作業机や、錆び付いた工場用の道具。
ここは廃工場。誰も立ち寄らないような場所だ。しかしそこに、珍しく多くの人間がおり、彼らは2手の勢力に分かれて対立している。
1つは、廃工場のどこかで見つけたのであろう鉄パイプを持った、10人の男達。もう1つは、全体的に白くカジュアルな服装で、右手で1本の木刀を持ち、どこにいても目立ちそうな赤い長髪の女性が1人。
───そう、彼女だけが10人の男達と対立していたのだ。
「へへっ、負けて犯されても後悔するなよ?」
1人の男が、舌で舐め回しつつ女性に忠告する。逃がす気は毛頭無さそうだ。しかし彼女は、何の反応も見せず華麗にスルー。
「オイ・・・なめてんじゃねぇぞゴラァッ!!」
───ダッ!!
彼女の態度が気に入らなかったのか、忠告した男が彼女に向かって走り出す。それでも彼女は微動だにせず、向かってくる男を見続けている。
「隙だらけだぜ!!」
───ブンッ!!
先手必勝と言わんばかりに、男は問答無用に鉄パイプを彼女の頭上目掛けて振りかざした。
───が、鉄パイプが彼女に当たることはなかった。
───カキィン!!
「なっ!?」
彼女が、右手に持っていた木刀だけ・・・しかも片手だけ使って防いだからだ。
力一杯攻撃したようで、防御を疎かにした男に隙が生まれる。そこを的確に突くように、彼女は余った左手を握り締めると、
───ドスッ!!
「ごぁっ・・・!?」
男の腹に、速くて重いボディーブローを1発を入れた。
───ドシャッ!!
まともに拳を食らった男は、糸が切れた人形のように床へ崩れ落ちる。まさかの事態を前に、後ろにいた男達が騒つき始めた。倒された彼はリーダーだったのだろう。明らかに統率が取れていない。
「や、やれー!!一斉にかかれー!!」
そんな中、1人の男が半分やけくそで皆に合図を出した。指示を聞いた男達は、流れるように走り出す。
「・・・ウゼェな」
対する彼女は、鬱陶しそうにポツリと呟いて木刀を握り締め、同じく男達に向かって走り出した。
───彼女と対峙する前、男達は10人いれば勝てるだろうと思っていた。
しかし、鬼神を相手に10人は足りなさ過ぎた・・・気付けば廃工場には10人の男達が倒れ、1人の女性が無傷で立っていた。
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