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「あいつは…。」
日が真上に昇り、街が賑わう時間帯。高杉は明け方見た男を思い出しながら、路地裏を歩いていた。
「ったく。信じらんねえ事ばかり起きやがる。」
キセルから煙を吐き出し、高杉は口角を上げる。春雨と共同で行うテロの計画は前々から立てていたのだが、その目的が神楽だと聞いた時も驚いた。あのじゃじゃ馬姫と七師団長の因縁に興味が無かった訳ではないが、あくまで目的はテロ。高杉はそちらに集中すべきだと判断したのだが。
「まあ…まだ時間はあるよなあ?」
日はまだ高いし、計画は明日の夕刻からだ。一人考えて、高杉は歩く方向を変える。彼の表情は心なしか楽しげだった。昼の空に似合わない、紫煙を纏った黒い獣は、兎の元へ歩き出した。
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