てふてふ

5/6
前へ
/25ページ
次へ
「おい、かぐや姫。」 「私かぐや姫じゃないアル、神楽アル。」 訂正する神楽に、落ち着いた様子で高杉は続ける。 「じゃあ神楽。お前、春雨第七師団長の男を知ってるか?」 尋ねると、神楽は目を細めた。左手を掴む力が強くなり、神楽が動揺しているのがわかる。 「なんだ、知り合いか?」 「知り合いもなにも、そいつは私の兄貴アル。」 「ほう…。」 その返事に、高杉はどこか納得し、同時に神楽に同情した。神楽の言う事が事実なら、神威は神楽に地獄の選択をさせようとしている。最善の方法を選んだとしても、優しい彼女なら生涯苦しみ続けるような選択を。 「お前も、難儀な星の下に生まれたな。」 「…何が言いたいアルか?」 果物ナイフの刃が笑う高杉の首に浅く刺さり、血が一筋零れ落ちる。 それを感じながら、高杉は何気なく言った。 「俺はお前の事、嫌いじゃなかったんだが。」 こんな事になるとは残念だ。 ふわりと笑った高杉に神楽の力が緩んだ瞬間を、彼は見逃さなかった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加