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「おい、かぐや姫。」
「私かぐや姫じゃないアル、神楽アル。」
訂正する神楽に、落ち着いた様子で高杉は続ける。
「じゃあ神楽。お前、春雨第七師団長の男を知ってるか?」
尋ねると、神楽は目を細めた。左手を掴む力が強くなり、神楽が動揺しているのがわかる。
「なんだ、知り合いか?」
「知り合いもなにも、そいつは私の兄貴アル。」
「ほう…。」
その返事に、高杉はどこか納得し、同時に神楽に同情した。神楽の言う事が事実なら、神威は神楽に地獄の選択をさせようとしている。最善の方法を選んだとしても、優しい彼女なら生涯苦しみ続けるような選択を。
「お前も、難儀な星の下に生まれたな。」
「…何が言いたいアルか?」
果物ナイフの刃が笑う高杉の首に浅く刺さり、血が一筋零れ落ちる。 それを感じながら、高杉は何気なく言った。
「俺はお前の事、嫌いじゃなかったんだが。」
こんな事になるとは残念だ。
ふわりと笑った高杉に神楽の力が緩んだ瞬間を、彼は見逃さなかった。
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