12人が本棚に入れています
本棚に追加
何処に行くわけでもないし、行くあてもない。ユウは適当に民家の屋根を走り回り、何処かのビルの屋上に着いた。ごろんと寝転がり、薄暗い空を見上げる。
アノ男ヲ殺セ
頭の中で声がする。
「…黙れ。」
ユウが雑念を振り払おうとするが、また声は頭の中で響く。
アノ男ヲ殺セ
母ヲ傷ツケタアノ男ヲ
母ヲ裏切ッタアノ男ヲ
腕ヲ切リ足ヲ切リ
首ヲモギ取リ
臓物ヲブチマケテ
力ヲ解放シ
真ノ姿ヲ曝ケ出シテ
殺セ
殺セ
殺セ!!
「五月蝿い!!!!」
ユウは跳び起きて傘を振り下ろした。手応えはなく、傘は空を切っただけ。ユウはいつの間にか流れ出した涙を拭い、傘を下ろした。その時。
「随分荒れてるね、神羅。」
悪魔の声が、聞こえた気がした。
最初のコメントを投稿しよう!