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「なんか呆気ないですねィ。」
総悟が刀に付いた血糊を払いながら言う。
「んなこと言うな。行くぞ。」
先に刀を収めた土方は歩き出しながらそう行ったが、内心総悟と同じ意見だった。彼等は、鬼兵隊が今日の夕刻集まるという情報が入った町外れの倉庫を訪れ、攘夷浪士の捕縛・討伐にあたった。しかし、思ったより攘夷浪士は少なかったうえ、高杉や幹部と思われる人物はいなかった。何度も真撰組の手を逃れてきた高杉の実力なら当たり前かもしない。だが、何かおかしい。土方を、言い表せない焦燥が襲う。
(なんだ…?)
自分は何か大切な事を見落としているのではないか―――
そんな物思いにふける彼の耳に、悲鳴のような無線からの呼び出しが響いた。
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