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夜明け前―――薄く空が明るくなってきた頃、神楽は目を開けた。手を握る総悟に気付き、柔らかく微笑む。
(総悟が助けてくれたんだ。)
ふと、捕われていた時の事が鮮明に蘇る。銀時に犯された感覚は、神威に犯された恐怖まで呼び覚ました。聞こえる自分の悲鳴、上から見下ろす実の兄。抵抗する自分を嘲笑い、続けられる行為―――
「い、や…。」
唇から零れる拒絶の言葉。細い肩は震えだし、歯がカタカタと言う。
「神楽…?」
彼女の変化に気がついたのか、総悟が目を覚ました。目の前で声を殺して泣く神楽に驚き、咄嗟に彼女を抱きしめる。
「神楽、どうしたんでィ!!??」
「いや!!神威、触らないで!!」
神楽の言葉に総悟は目を見開く。そして神楽の頬を手で包んで、自分と向き合わせた。
「神威じゃねェ、総悟でさァ。」
ギュッと潰れた目が開かれる。現れた青い瞳は、総悟を映すと綺麗な雫を流した。
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