プロローグは突然に

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 冬の渇いた空気が顔に当たり、俺は馬のように身体を身震いさせた。  世の中、温暖化と騒がれてはいるが、それに反比例するかのように冬は寒い。  吐息が白くなるのを確認しながら、学生服の上に着込んだダウンジャケットの首元を締める。  帰宅がてらに温かい食べ物を買い食いしている学生を見ると、羨ましく感じるが無駄な金を貧乏学生としては使う訳にはいかない。 (まあ……貧乏とは違うか)  自分の考えにツッコミを入れながら、早足でバイト先のコンビニを目指す。  嫌な先輩はいるが、とにかくコンビニ内は温かいと言うメリットが魅力だ。  俺の名は笠原悠人【かさはらゆうと】。  高校二年の平穏を望む、ごく普通の男子だ。  まあ、普通と言っても色々あるわな。  俺自身は普通だと思うが、周りの人間は意外とそうは思わないようである。  孤児だった俺は、ラッキーな事にそうそうに気立ての良い養親に引き取られた。  子供の出来ない養親は、他にも同じような子供を二人引き取っている。  義姉と義妹だ。  美人姉妹と呼ばれる二人のおかげで、こちらの気苦労は堪えないのだが……まあ、それは置いておこう。  とりあえずそんな環境で育った俺は、養親に迷惑をかけないように上っ面だけは整えるのが上手くなった。
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