290人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっ?」
通りすぎた何かは、俺の左前方にあったバス停の時刻表に突き刺さっている。
細い針のような、鋭利な銀の突起が飛び出ていた。
「人の話を聞かんか痴れ者が! わらわが来いと言ったならば、四の五の言わずに這ってでも疾く参上せよ!」
美少女はご立腹なのか、鋭い眼光をこちらに向けた。
視線に射殺されそうで、俺は一歩後ずさる。
周りを見ると危険を察知した小動物のように、通行人達はそそくさと逃げ始めていた。
俺も逃げたい衝動にかられたが、相手は睨みつけながら迫って来る。
まるで熊に狙われた人間の気分だ。
視線を外して逃げ出せば一瞬で襲われるであろう。
俺は視線をそのままに、じりじりと後退した。
「何のご用かな? 俺はあんたと知り合いだった記憶が全くないんだが……」
「今、初めてあったのだ。初対面は当然であろう? それとも何か? そなたは初対面の人間とは話も出来ない、チキン野郎と言うことか?」
何故か含みのある笑い顔で、どんどん近づいて来る。
正直、何やら嫌な予感しかしないのは何故か?
まるで人攫いが、子供を誘拐しようとしている時の笑顔に感じる。
まあ、そんなものは実際見たこと無いが、概ね外れてはいないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!