プロローグは突然に

7/39
前へ
/53ページ
次へ
とんでもねぇー事をこの女はさらりと言いやがった。 キルフィン・ゼラ・グラーディアと名乗った女は鍵型ナイフを器用に一回転させると、まるで殺人鬼のような面持ちで近づいて来る。 俺は慌てて起き上がると一目散に逃げ出した。 「逃げるとは何事だ! 素直に刺されよ!」 無理難題な命令を下しながら美しい切り裂き魔が動き出す。 俺は地元の利を活かして、路地裏に逃げ込んだ。 この騒ぎを遠めに見ていた通行人達が、騒いでいる声が聞こえてくる。 誰か通報してくれる事を祈るばかりだ。 と、言うか通報してくれ~コンチクショ! いや、全速疾走しながらも携帯電話を使うべきか? 他力本願はみっともない。 警察を呼ぶと言うのは、平穏を望む俺的にはかけづらいイメージがあるが、背に腹は返られない。 俺はズボンに入れておいた携帯電話を急いで取り出すと、押し馴れない110と言う番号をプッシュした。 「よし」 着信音の次に、オペレーターらしき女性の声が聞こえる。 『はい警察です。事件ですか、事故ですか?』 俺が嬉々として通話越しの質問に答えようとした瞬間だった。 轟音が耳を貫いたのは。 何が起こったのかをいまいち理解出来なかった。 気づけば地面に転がっていた。 「なっ……んだ?」 身体中の痛みに俺は顔を歪めた。 とにかく背中と左肘の痛みが酷い。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

290人が本棚に入れています
本棚に追加