プロローグ 亡国の王と新国王

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コツコツ。靴には硬質な床を叩く音が混じる。 「鎖を解け」 威厳を持つには高い、されど木漏れ日のように穏やかな声色。手の自由を得てそっと目を上げれば、少年が膝を曲げ視線を同じくしていた。 「何故?」 勝利した国として玉座でふんぞり返っていればいいのに。 「あなたは国王だ」 自分に恥をかかせぬため、この国王は王座を降りたのだ。 「貴殿がササナの新たな王か?」 未だ少年と言うべき年頃。小さな身体に、きらびやかな衣装は、意匠を凝らしたマントは、宝石で飾った王冠はあまりに不釣り合いだった。
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