以下略

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俺こと、山田 零(レイ)は中肉中背、日本男児そのままの高校生。 これといって自身の内外共に特徴はないものの、主人公補正を持つ友人に挟まれ、日々窮屈な思いをしながら、その友人と青春を過ごしている。 そう奴等を主人公とするなら、俺は王道的なフツメン脇役だろう。 この偏屈な思考も闇落ちルートを開口しそうで―― キーンコーン カーンコーン と独特の不協和音が時刻を告げる。 「きり~つ、れ~い」とクラスメイトのS沢君が6限目終了の号令をかける。S沢君は友人と無事に教室から消えた。 家に帰ってからのことを考えていると、いつの間にかその日最後の授業が終わったわけで、その後のショートホームルームも気にする事なく聞き流し、放課後に移る。 抜き足差し足で一人孤独に楽しく下校を試みるのだが、外界への最後の一歩をば踏みしめようと思っていると。 「レイ!」と元気で正義感が強そうな声に待ち針を刺され、その上がった足は次に踏まれず、宙に浮いた足は一コマ前の位置に戻る。 返事もなく。声の方向に振り返ると、そこにはイケメンが立っていた。 「レイ!!一緒に帰ろう!!」 声優でも目指しているのかと思うほど透き通り、芯のあるその美声には、感動すら覚える。主に気が滅入る方向に。 「ああ…」 断りたいが断れない…。 周りの、いやこの学校、言い過ぎだとは思うがこの世全体からの視線。 様々な視線により断るに断れない空気にされている様な気がするのだ。 そして、その感じがある時は、往々にして、成るべく形のストーリーに組み立てられる。 不思議な力で。 そんなものに晒された俺は何も言えない、脇役になるのだった。
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