新しく選ばれた者たち

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「……さてと」 生きているただ一人の浪士を気絶させ縛り上げ、沖田は一息吐いて立ち上がった。 「終りましたね」 「そうだね」 そう言って藤堂も立ち上がる。 「では、甘味屋に行きましょうか」 「え……あれ、本気だったの?」 藤堂は、ここに来る道中の会話を思い出して顔を引きつらせた。 「本気ですよう!ひと働きしたんですから、ちょっとぐらいいいでしょう?」 「いや、ダメだって!まだ仕事中だから!土方さんに怒られちゃうよ!」 「ぶー!」 頬を膨らまして不満を露わにする同僚に、藤堂は溜息を吐いた。 ……ちなみに、沖田の方が年上である。 「ほら、帰るよ!」 「甘味ぃ」 「こんな格好じゃどのみちダメでしょ?」 「格好?」 藤堂の言葉に、沖田は自分の格好を見てみた。 「あー」 彼らの象徴とも言えるだんだら羽織。 その浅葱色は所々血がつき、赤黒くなっていた。 もちろん全て返り血であり怪我をしているわけではないのだが、これで甘味屋なんぞ行ったら忽(タチマ)ち大騒ぎになってしまう。 「ほら、おとなしく帰るよ」 藤堂はそう言って、捕縛した浪士を引き摺り屋敷の外へ出る。 沖田も、藤堂の言葉に口を尖らせたが、渋々藤堂に続き外へと出て行った。 外に出ると、血塗れの2人を見て街行く人々が悲鳴をあげる。 そんなこともお構いなしに、彼らはスタスタと歩き出した。 「……甘味屋、後で絶対に行きましょうね」 「はいはい、非番になったらね」 「絶対ですよ!絶対!」 「わかったってば」 そんな会話をしながら彼らは歩く。 そんな彼らの頭上では、澄んだ浅葱色の空が広がっていた。
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