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文久三年・京
澄んだ秋晴れの空に悠々と漂う真っ白い雲。
いくらか色素の薄くなった青空の下(モト)、肌寒い風が吹き抜ける大通りには今日もたくさんの店が並び、活気づいている。
その中を歩く青年が2人。
1人は、いくらか伸びた色素の薄い琥珀の髪を下にちょこんと結った、大きな瞳の小柄な好青年。
名を藤堂平助(トウドウヘイスケ)。
その隣、藤堂とは対照的な黒く長い髪を後頭部の上で結ぶ、爽やかな顔立ちのニコニコ笑うやや背の高いこれまた好青年。
彼の名は沖田総司(オキタソウジ)。
まだどちらも20代になったばかりという若い彼らは、浅葱のだんだら羽織を羽織っていた。
「ねぇ、平助」
歩きながら、沖田が藤堂に話しかけた。
「何、総司」
歩きながら、藤堂が応える。
「暇ですねぇ」
「……いや、暇じゃないから。ちゃんと仕事あるから」
「終ったら甘味屋でも行きますか」
沖田は「ふぁああっ」とあくびをして言った。
「あのね、そんな場合じゃないでしょ」
藤堂は苦笑いをする。
やがて2人は、ある屋敷の前で立ち止まった。
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