新しく選ばれた者たち

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「行動がお早いことで」 「“駿足”ですから」 沖田は藤堂の呟きに答えると、二階へと姿を消した。 「……お前ら、壬生狼だな?」 藤堂の目の前で刀を抜きはらっている浪士が尋ねた。 「……違うよ」 藤堂が口を開く。 「たわけ!!その羽織は壬生狼の羽織だろうが!!」 「いまさら何を言うか!」 答えた途端口々に飛んできた言葉に、藤堂はため息を吐いた。 それは、やれやれといった風に。 「壬生狼、じゃない。オレらにはちゃんとした名前があるんだよ」 藤堂は未だ刀を抜いていなかった。 漸(ヨウヤ)く刀に手を掛ける。 その行動に、浪士たちが警戒の色を濃くした。 「オレたちは…………“新選組”、さ……!」 その時藤堂の目の前にいた一人が血飛沫を上げた。 藤堂は動いていない。 しかし、浪士は袈裟懸けに身体を裂かれていた。 「……え……?」 浪士共は一瞬瞠目した。 ……何が起きた……? その浪士がひとりでに斬り殺されたように見えた。 空中に浮く、彼の刀、で。 「ひいぃぃぃぃいいい!!!!」 一人の浪士が逃げ出した。 「相手は一人だ!!怯むな!!斬れっ!!」 誰かが叫ぶ。 「たった二人でで我々の根城に乗り込んでくるとは愚かな!」 一人が藤堂に斬りかかってきた。 藤堂はそれを見て、呟いた。 何の感情も無いような、冷めた無表情で。 「……さあ、始めようか」
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