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それからは、圧倒的であった。
一対多であるにも係わらず、圧倒的に浪士劣勢。
刀を抜いた藤堂は、ほんの僅かな容赦さえ無かった。
襲い掛かって来る敵を袈裟懸けに斬り、足払いをして倒し、首を刈る。
後ろに迫る者どもには、その刀を止めて斬った。
その場に立つ最後の浪士を斬り伏せると、辺りは血の海と化していた。
ほんの数分で藤堂は死体の山を作った。
辺りに静寂が立ち込める。
不意に、微かな気配を感じそちらを向いた。
「ひっ!!」
そこには、この屋敷の娘だろう、12・13の歳の少女が立っていた。
この惨劇にその愛らしい顔を青くさせ、身体を震わせている。
藤堂と目が合うと、小さく悲鳴をあげた。
そもそもこの場所は、京によくある一般的な宿屋のはずであった。
例外もなく、その宿を経営している家族が在る。
今日も明日も、その“日常”が続くはずであったのだ。
……不逞浪士を匿わなければ。
「……」
藤堂は無言で自身の刀を鞘に収めた。
チンッと小気味よい音が響く。
その藤堂の行動を見て、少女が安堵の息を吐くのが見て取れた。
次の瞬間ーー
「……え?」
少女は、自分の体がトンッと後ろに押されるのを感じた。
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